聴覚リハビリ 北九州市戸畑区の耳鼻咽喉科・小児科 一枝クリニック

一枝クリニック

イラスト聴覚リハビリ

聴覚リハビリ

こんにちは。一枝クリニックの補聴器外来です。

八幡東区の高炉台公園、小倉北区の小倉城も紅葉し始めましたね。

今月は、脳のリハビリのお話をします。

例えば、普通の会話が聞き取りづらいと感じ始めてから「まだ大丈夫、補聴器なんて大げさ」と思って何年もそのままにするとします。
そうやって、言葉の聞きづらさに気付いて何年も経ってようやく補聴器をつけた時、生活を取り巻く音の大きさにびっくりします。
やかんが沸騰する音、洗濯機が回る音、車の音、セミの声、のように日常にあるごくありふれた生活の音でも、今まで聞こえてこなかった音が突然お耳に飛び込んでくるからです。

「補聴器をつけたら聞こえがよくなるって聞いたけど……雑音もこんなに聞こえるの!?」
そうです。補聴器の仕事は音を大きくすることです。会話音も雑音も大きくします。
では、雑音の聞こえはこのままなのでしょうか?
いいえ、違います。聞こえ方はだんだんと変わっていきます。
それを説明するためにまず①補聴器、②お耳、③脳が担当する仕事について整理します。

まず補聴器をつけた時の音の伝わり方は補聴器→耳→脳の順番です。
① 補聴器の仕事は「音を大きくして耳に届ける」ことです。
② お耳の仕事は「補聴器が大きくした音を、脳に届ける」ことです。
③ 脳の仕事は「聞こえた音を話し声かそうでないかに分けて、話し声を集中的に分析すること」です。同時に、「会話中、周りで聞こえている雑音については、会話の邪魔なのでできるだけ分析を抑える」ことも仕事です。脳は複雑で高度な仕事を瞬時にこなします。

難聴に気づいてから何年も放置した場合、脳は音を分析する仕事にブランクがある状態です。
脳としては長いことたくさんの音を分析する仕事から離れているのに、いきなり「補聴器のおかげでたくさん音を持って来たよ! どんどん送るから早く分析してね!」と言われても、「えぇ……頑張るけどさ、ちょっと待ってね」となるのです。

その「ちょっと待ってね」の期間が、脳のリハビリの期間です。
補聴器を初めて使う方が補聴器の聞こえ方に慣れるまでには個人差がありますが、3ヵ月から1年かかると言われています。
この期間は、脳が音を会話と雑音に分析して、会話音を重点的に処理しようと少しずつ変わっていくために必要な時間です。

補聴器をつけ始めて、音の違和感を感じるのは補聴器を使い始めた皆さんが感じることです。違和感があるから「使えない」と言って補聴器を外してしまうと、脳ががんばるチャンスをなくしてしまいます。
脳が音を分析する仕事に復帰するために、最低でも3ヵ月は補聴器を毎日つけ続けて脳のお仕事を支えてあげましょう。それが脳のリハビリです。登山のようなイメージです。

以上、補聴器スタッフ 言語聴覚士の中でした。

投稿日:2022年11月14日
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